高校受験

志望校予想倍率から見る2020年度の都立高校入試①

今年も新年早々、「都立高校志望校調査集計」(いわゆる校長会調査)が発表された。毎年の都立高校入試において、オフィシャルにされる年度最初の予想倍率だ。

    既に発表から一週間が経過しているため、多くの塾関係者のブログや教育関係のコラム等でも、今年度の校長会に基づく入試予測は語りつくされている感がある。とはいえ、改めて『大森山王学院』としても、近隣23区の都立高校の動向を中心に、今年度予測される高校入試の動きについて、以下にまとめておきたい。

① 都立高校志望者は3年連続大幅減少多摩地区はジリ貧状態で都立希望者は狙い目。

全体の概況を述べるとするなら、「相変わらず都立敬遠の動きが止まらない」ということだろう。2017年度(3年前)と比較して都立高校志望者は6000人以上減少してしまった。もちろん、少子化の影響で東京都の公立中学生も3年間で2000人弱減っているという点もあるが、それを加味しても大幅な「都立離れ」だ。東京都の「私立高校実質無償化」制度と、大学入試の難化に対する懸念が、都立離れに拍車をかけていることは間違いないだろう。
ちなみにこの校長会予測の集計は12月の上旬に行った調査であり、その時点ではいわば態度保留(とりあえず『私立高校志望』と答えた等)だった生徒もいる。そのため、実際には中堅校以下を中心に当日の出願時には今回の校長会予測よりもさらに倍率が上がることが多いのだが、私は今年に関してはその逆が生じるのではないかと予想している。なぜなら、この調査集計の後になって東京都は上記の「私立高校無償化」枠の拡充を正式に発表しているからだ。(私立無償化対象の年収制限が760万円から910万円となる。)こうなってくると「とりあえず都立高校に」と考えていたご家庭で「やっぱり私立に変更する」という動きも出てくるだろう。

当初、この「私立高校無償化」政策は、都立高校の中でも中堅下位校(偏差値50以下)での倍率低下という形で影響が見られた。
「教育格差と所得格差」というテーマを今回のブログで長々と論じるつもりはないが、やはり学力下位の生徒ほど、私立に流れる。一般的に言って、偏差値45前後の高校であれば、都立高校よりも私立高校のほうが(面倒見がよく、秩序が維持されるゆえに)高校生活も安定する可能性が高く高校後の出口(将来の進路)も相当広いと判断して間違いない。そもそも、金額が変わらないならチープな設備しかない都立よりも、「きれいな私立がいい」と子供たちも親御さんも考えるのは当たり前だ(ここ数年、かなりの数の都立高校が全面改修工事を行って校舎をリフレッシュさせているが、それでも多くの私立の校舎とは比較になっていない)。

ところが、去年そして今年と推移を見ていると、偏差値50~65位までの中堅校・中堅上位校にも都立離れが加速していることが見て取れる。典型的な例は、多摩の三北と呼ばれる三校(武蔵野北・小金井北・調布北)だ。かつては平均倍率2倍の常連校だったが、今年は女子で1.5倍前後、男子は1.3倍前後まで落ち込んでいる。特に武蔵北と小北は校舎をリニューアルしてこの水準というのに驚く。近隣の私立、特に付属校(中附・中杉・法政・日鶴・専大付属等)に回ってしまった感が強い。

この大学入試を見据えた「私立付属校志望」による都立離れは、多摩地区では特に顕著であり、特に南多摩地区では、旧7学区トップ校の都立八王子東が0.97倍(男子)、二番手校の都立町田が1.04倍(女子)と、入試当日は全入もあり得るほどのジリ貧状態になっている。多摩地区都立高校の雄、都立国立高校(旧10学区)ですら、今年は1.43倍(男子)という有様だ。

前回のブログでも書いたとおり、都内の私大は定員厳格化で合格がなかなか出ない。昨年の大学入試では、私大センター利用で平均80%近くをとっても日東駒専が一校も合格が出せない生徒が続出した。85%オーバーまで追い上げても成蹊大の合格がでない。
(一般の大学入試なんて)もうやってられない」という高校生たちの気持ちも理解できなくはないのだ。MARCH付属の高校受験で合格をとることは相当難しいとはいえ、大学入試でセンター85%をとるよりは遥かに簡単である。「だったら高校受験でMARCH進学を確定させよう」。その辺の損得勘定までできる中3生は明らかに私立高校を考慮する。

これは、多摩地区の進学重点校(最上位校)に、付属の私立を押しのけてまで「どうしても受けたい」と思わせるものがない、ことにも原因があるのかもしれない。あまり特定の高校をディスりたくないので詳しい言及は避けるが、今の南多摩地区の進学指導重点校は、23区の最上位校集団である都立戸山や都立青山あたりに、もっと厳しく言えば準二番手校にあたる都立新宿や都立駒場のような学校あたりにも負けているな、という「迷走」感がある。

もちろん、どれほど「迷走」していようと、多摩地区における都立最上位校グループの一校に入学できることは、非常に貴重な人生経験になることは間違いないだろう。周りの生徒達から学ぶこと毎日のハイレベルな授業高度な文武両道を追い求める経験。すべてが他のいわゆる「一般的な上位校」とは桁違いになるはずだ。そういう点では、「どうしても上位の都立がいいんだ」という中3生で、多摩地区の高校まで物理的に通える生徒は「とてつもなく美味しい入試」の年になるかもしれない。ある程度の実力を備えており、ご家庭の事情が許すなら(最悪私立になっても大丈夫なら)、多少のリスクを背負ってでも悲願の上位校をトライすることが可能な年になる、と考えられる。

さて、23区の都立高校はどうか?

②へ続く

 

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大森山王学院 中学部主任 山口 拓郎

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最終更新:2022年6月26日

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