②23区は上位校を中心に都立人気を堅持。ただし、意外な穴場も。
多摩地区における「都立離れ」の加速とは裏腹に、23区は比較的人気を維持し続けている高校が多い。都心回帰による子育て世代の人口増加も背景にはあるだろうが、やはりそれ以上に、23区の都立には、そこに通いたい、と思わせるだけの魅力があるのではないだろうか。
都立日比谷・都立西は微減で少しずつ下がってきているが、逆に都立戸山・都立青山は人気上昇中で、青山はついに男女ともに倍率が2倍を超えた(二年前は1.5倍だった)。都立青山の躍進ぶりは目を見張るものがあるだろう。一時は「進学重点校」の看板を維持することが危ぶまれた時期もあったが、見事持ち直し、東大合格者数も6名→7名→10名と絶好調だ。
二番手~三番手校クラスはさすがに私立志向の流れを受けざるを得ない状況にはある。旧1区の小山台、雪谷。そして旧3区の豊多摩はいずれも1.5~1.6倍ライン。3年前くらいに比べると2~3割倍率が下がっている。旧4区の竹早は昨年が大穴で相当楽な入試になったが、今年は反動で揺り戻しが起こっている。とはいえ、その竹早ですら、数年前の勢いはない。これらは前述の多摩地区の三北(武蔵野北・小金井北・調布北)と同じ傾向だ。
結局のところ、偏差値60ラインの都立二番手・三番手校の学校を志望する生徒は、私立MARCH付属等と都立高校との間で駆け引きをせざるを得ない。偏差値60の都立に入ってMARCH(もしくはそれ以上の大学)が果たして受かるだろうか、という不安と、MARCH付属に入ることで早慶などの上位校を狙う可能性を潰すことにならないか、という不安を天秤にかけるはずだ。そのはざ間で、数年前まであった「私立だと親に金銭面で迷惑をかける」という心理面のタガが外れれば、一気に私立に気持ちが向かうことも不思議ではないし、もちろん間違った選択ではないと私は思っている。
逆に、「学費とか、設備面での良さ」などよりも、もっと大きな価値を見出せる高校であるならば、あえて都立高校を選ぶ生徒は大勢おり、その対象となる都立高校がまさに都立戸山や都立青山などなのだ。そしてそれゆえに最上位校の都立は人気を維持する。戸山や青山に行きたいと思う生徒の多くはMARCHへの合格切符と都立高校でのリスクを天秤にかけるようなことはしないだろう。彼らの多くが見据えているものは、MARCHなどではなく国公立大や海外の大学だ。戸山であるなら医学分野の世界に対する興味を持つ子もいるかもしれない。
さて、総じて安定した人気を維持している23区の中にあって、数年前ではありえなかったほどの低倍率もしくは定員割れを起こしている都立高校がいくつかある。都立大泉・富士・白鷗・両国・武蔵の5校だ。いずれもかつての旧学区でNo2~No3を競った名門校であり、約10年前から付属中学校が開校したのだが(いわゆる都立中高一貫校)、他の中学入試のみを行う都立中高一貫校(都立小石川や都立三鷹など)とは違い、高校受験組との併設型をとっており、12歳のときに中学入試で入ってきた生徒と、15歳のときに高校入試で入ってきた生徒が同じ高校で勉強している数少ない学校だった。そんな独自路線を貫いていた5校だが、やはり中学から頑張ってきた受験組と高校入試組との合流は色々無理があったのだろう。上記の5校も2021年(もしくは2022年度)をもって高校入試の募集を停止することになった。
翌年には募集を停止することが確定している高校を志望する生徒は少ない。よって都立大泉0.49倍、都立富士0.64、都立白鷗0.95、都立両国0.67、武蔵0.79(いずれも男子の倍率)とすべて定員割れを起こしている。
高校をブランドだけで考えるのが一概に良いとは言いきれないが、これらの学校を狙うのはもしかすると千載一遇のチャンスになるかもしれない。都立富士や都立武蔵はかつて東大現役合格も出した名門校だ。そこにほぼ無条件(最終的に全入になるかどうかはわからないが)に入れるというのはなかなかあることではない。
もちろん、なかには「中学入試組との人間関係が大変…」とか、「そもそも入学できたとしても勉強についていけるか…」などと心配される方もいるかもしれない。
はっきり言っておこう。「そんなことを心配するぐらいなら、学力相応の学校を普通に受験しろ」と。
高校入試という分岐点は、「どんな人生を歩みたいのか」、「自分は何を売って生きていくのか」を問う最初の関門だ。「自分はもっと成長したい」、「流れを変えていきたい」、「ビックになるんだ」。なんでもいい。そういう意思を行動で表す瞬間である。もちろん、すべての願いが叶うわけではない。高校受験という一つの関門を突破したからと言って、その後の人生が成功するとも限らない。
でも、もし自分をよい高いポジションに持ち上げるチャンスが少しでもあるなら、そしてそのチャンスを掴みたいなら、全力で掴めばいいじゃないか。
「高校での人間関係」、「入った後にその場に適応する能力」。そんなものはこれから大学に入っても海外に留学しても、社会に出ても、なにかにチャレンジし続ける限りずっと付きまとう問題だ。本当に自分の能力を上げたいなら、なんとしてでも乗り切らなくてはいけない。
校長会の予想倍率をもとに、都立高校の近年の傾向と、今年度入試の現時点で予測できる展望とについて簡単にまとめた。
もちろん、冒頭で述べたとおり、この予想倍率は12月時点での集計であり、当日に向けてまだまだ変動があるだろう。そのことを踏まえてぜひ参考にしていただきたい。どの学校に最終的に出願するかはそれぞれの自己責任であることをご承知おきいただきたい。
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最終更新:2022年6月26日