高校受験

ピンチをチャンスに。コロナ禍で見えた子供たちの可能性とZOOMオンライン授業の有用性

ほんの2カ月前。多くの塾が授業をオンラインで行う、なんてだれが想像しただろう。

3月の末に急遽決まり、バタバタと始まったZOOMの準備。すでに仕事などでZOOMを使い慣れている人たちも大勢いて、私自身は最新のテクノロジーに全くついていっていない(ついていこうとしていなかった)ことを反省しながら大森山王学院の保科学院長や他の友人たちから手ほどきを受けた。

あれから4週間。覚えたての知識を今度は生徒達に教え、今は当たり前のようにZOOMで授業を行っている。

スマホ世代の子供たちは私よりもはるかに早く(私がまだ覚えていない様々な使い方まで独自にマスターしたりして)ZOOMの達人になった。やっぱり子供たちはすごい。

ZOOM指導画像

ZOOMはホワイトボード機能なども持ち合わせ、何かを教えたりするには大変有用なのツールだと感じている。お互いに同じ教科書やプリントが手元にあれば、解説をするときもほぼ目の前に生徒がいる(あるいは生徒側から見れば目の前に先生がいる)のと遜色ない授業が可能になる。オンラインでここまでリアルな対面授業ができるとは思わなかった。

とはいえ、このZOOMによる塾の授業ができることには、他にもいくつかの利点があると私は思う。

 

一つは生徒たちとのコミュニケーションを通して、生徒たちのやる気を引き出す(持続させる)ことができるということ。

大手塾を中心に映像授業を配信して、生徒達の学習環境を整えている塾もある。それはそれで大変なことであり、なかには個人塾でも先生一人ですべての授業を録画して編集作業までをこなし、生徒たちに提供している塾もあるとお聞きする。想像を絶する作業量だろうし、その先生たちの熱意には敬服するものがある。

映像配信をしている塾の多くは、授業の配信と同時に、電話やメール(もしくはその他のオンラインによる連絡手段)で生徒達に対して定期的にコンタクトをとっているはずだ。生徒たちの学習相談にのると同時に、生徒達のモチベーションを維持させることが主な目的になるだろう。

はっきりいって、この超長期休校期間に一番課題となるのは、勉強の理解度ではなく、勉強をすること(もっといえば、毎日の生活を送ること)への「気持ち」を維持させることだ。

人って、なかなか一人では頑張ろう、という意欲を持ち続けることは難しい。だからこそ、多くの子供たち(ご家庭)は家で通信添削等の教材を学習するという選択よりも、あえて塾に通うという選択肢を選ぶのだろう。

生徒たちのやる気を引き出し、持続させること」。これは塾が果たさなければいけない使命の一つだと私は捉えている。

だから、私は家で学習しなくてはいけない状況下でも、この役目を果たしていきたい

ZOOMでのオンライン授業は、この点で通常の通塾のそれと100%同じものが提供できる、とまではいかないが、それでも十分に合格点を出せるだけの授業が展開できている、と感じる。

今、(大森山王学院を含め)私が直接担当している生徒は49名。直近の2週間を振り返っても、全員このコロナ禍のなかにあって非常によく頑張っているな、と感じる。各自に出している課題消化率に至っては、通常の通塾時よりも進みがはやかったりする。(学校が休校だから時間があるし当然だろ、というご意見もあろうかと思うが、そもそも家にいるばかりの子供たちが課題をしっかりこなすモチベーションを維持していることはすごいことである)

もちろん、先生からの電話やメール等でもやる気を出せる子もいるだろう。もっと言えば、そもそも外部の人(塾の先生)から励ましを受けなくても頑張れる子もいる。それは素晴らしいことだと思う。でも、多くの「励ましや意欲を引き出す支え」を必要とする子供たちにとって、このZOOMによるオンライン授業は充分に役目を果たしている、と言えそうだ。

 

ZOOM授業の利点。もう一つは、子供たちに生きる張り合いを作りだすことができる、ということだと私は思っている。

「生きる張り合い?退職したリタイア世代じゃないんだから…」

と思われるかもしれない。

でも、大勢の子供たちの様子を毎日見ている者として、私はリアルに感じている。今の子供たちは定年退職してやることが見つからない高齢者と同じくらい「生きる張り合い」(生きる意味や価値)を見失っている、と。

学校がある、部活がある、習い事がある。

毎日忙しい生活を送る子供たちが多い。忙しすぎるのでは、と感じるときもある。2月29日に休校が始まったときは、私も、「子供たちが少しリラックスできる機会になれば」とさえ感じた。実際に最初のうちは生徒達にとっても一時の清涼剤のような期間になっただろう。だが、あまりにも長すぎた。

「やることがない」。これは年少の者でも年配の方でもつらいことだ。

40名を超す生徒をZOOMで指導するにあたって、私は時間割を組んでいる。10:00~は中1生、13:00~は中2生、といった感じなのだが、私自身は授業が開始される15分~20分位前からZOOMを開いて待っている。そして多くの子は授業が始まる随分前から「入室」し、私と会話を楽しんでいる。普段は塾の授業では(部活等忙しいのもあるが)授業開始寸前に飛び込んでくる生徒ばかりなのに。

「どうぜヒマだから。」

そう言っているツンデレの中学生がいた。でも心の奥底では「誰かとつながっていたい」、「この時間を一日の張り合いにしている」のが垣間見れた。

 

塾のオンライン授業ですべてを補いきれないのは重々承知している。学習面でも、(学校や部活の穴を埋める)気持ちの面でも。

でも、今の塾でのオンライン授業は、確かに子供たちの必要を満たすものになっていると、私は自負している。

そして、先が見えないこの時期を、子供達が上手く活用していってくれることを願いたい。

有事になると、子供達は強く、そして優しくなるな、と感じる。それは今までの自然災害等の時にも感じた点だ。自分の与えられた環境の中でなにができるかを一生懸命考えたり、行動したりする力が子供は特にあるからだろう。

自然災害と今回のコロナ禍の違いは、大人がその子供たちが成長する機会(考えたり、行動したりするきっかけ)を用意できるかどうか、だろう。

いち塾屋として、まずは目の前にいる子供たちに、その機会を精一杯提供していきたい、と私は決意している。

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