学校案内のパンフレットや学校のウェブサイトを見るとき、多くの方が「卒業後の進路」というページを開くはずだ。いわゆる大学進学実績が載っているページ。
「この学校はどのくらいのレベルなのだろう?」
「うちの子は、卒業後どのくらいのレベルの大学に行けるのだろう?」
と興味が湧くのは当然のことで、それは塾のHPでも同じだったりする。(大森山王学院のサイトでも『合格実績』のページは毎日ある程度クリックされる方がいる。)
ただ実際のところ、どこの大学名をご覧になるのだろうか。
全くの推測で失礼ではあるが、多くの方は
「ああ、ここの高校は東大が何名出てるのね」
とか、
「早稲田・慶應あわせて〇〇名出ている」、あるいは逆に「早慶が〇名しか出てない」
といった上位校にどれだけ名を連ねるかに注目してしまい、その高校全体としての学力位置を掴むところまで見ておられないのではないか、とも感じる。
まず、あの「合格実績」というデータを見るときには、実際のその学校の(高3時の)学力水準とあそこに現れている数字とには二つの齟齬があることを留意していただきたい。
1)大学合格実績は「合格実績」なのであって、「進学実績」ではない。
いろいろな週刊誌などでも取り上げられているが、合格実績と進学実績は違う。合格は1名の優秀な生徒が合格を10校とったら、実績10となる。
生徒250名の学年の中に非常に優秀な生徒が10名いる学校があったとしよう。240名は全員日東駒専以下しか受からなかった。ただ上位10名だけは、みんなが早稲田大を3学部受験し、全員合格を勝ち取ったとする。抑えでMARCHを一人7学部ずつ合格したとする。その学校の「合格実績は、早稲田30名。MARCH70名」となる。
250名の学校でこれだけの合格実績が出たらかなりいい結果(偏差値60くらいの高校)だ。でも、実際にはMARCHより上に進学した者は10名(偏差値50くらいの学校)。その学校の学力のパワーというのは「合格実績」ではなく「進学実績」つまり、合格した生徒数に表れる。ちなみに進学実績(つまり合格した生徒の実数)は大学受験専門の塾や予備校に行けば見ることができるだろう。
2)上位大学合格者は、学校の勉強ではなく塾(予備校)の勉強で合格を勝ち取っただけ。
こんなことをいうと塾講師のひがみだと思われるかもしれない。それはそれで反論もしない。塾にも通わず勉強し、「私が〇〇大学に合格したのは学校の先生達の指導のおかげでした」と仰る方もいるだろう。それは真実なのだから本当に立派なこと。
ただ実情から述べるとするなら、多くの大学受験生は受験のための勉強を塾や予備校に依存している状態が続いている。
高校の説明会などに行くと、「うちの高校は塾に行かなくても大学受験のための対策や補習をしっかり行っていますので大丈夫です」という趣旨の説明をする高校(特に私立高校)が沢山あるのだが、実際にはその高校の生徒も自分の教室では何人も見ていたりして、
「学校の授業のスピードじゃ全然入試に間に合わない」
もしくは、「学校でやってる授業レベルじゃこの子の学力はこれ以上伸びない」
なんて例は枚挙にいとまがない。
そして、塾に1年間籠って無事合格したあかつきに、高校では「学校パンフに載せるから合格体験記を書いてくれ」とか言われたりする。本人は嫌々なのに「学校の指導のおかげで無事〇〇大学に受かりました」みたいなコメントが写真付きで載る。「茶番だなぁ」、というのが塾講師の正直な想いだったりするのだ。
では、合格実績のページのどこを見ればいいのか?
という話になる。
上述の通りで、そもそも合格実績自体あまり目を通す必要もないのだが、塾講師という立場で見るなら、私はそれぞれの高校の学力レベル(入学時の偏差値)に基づいて以下の3つの点に着目する。
①偏差値65前後もしくはそれ以上の高校
国公立大学の合格者数と浪人比率に注目する
最上位レベルの高校であるならば、学校全体として国公立大学を目指すぞ!という流れになるの当然だろう。そして国公立大学の合格者数というのは(基本的に一人一校なので)(1)で述べた進学者実数をかなりリアルに表すものとなる。同じ偏差値65強の高校でも国公立大の現役合格者数が生徒数の50%に迫る高校もあれば30%程度の高校もある。それだけでもその高校の学力パワーがある程度測れる(前述の通り、ほとんどの受験生は塾に通っており、塾で学力を伸ばしている。ただし、全体として何パーセントくらいの生徒がどこに行っているかを見るのは、学校全体としての勢いを理解するのに役立つ)。
注目するもう一つのポイントは浪人を決断する人がどれくらいいるかだろう。いうまでもなく浪人が悪いわけではない。志があるならば、さらに1年かけることはなんの問題でもないだろう。
ただ、例えば国公立現役合格者が50%の学校で、残りの50%が浪人してもあまり驚かないが、国公立現役合格者が30%の学校で、30%の人が浪人しているとしたらその高校の指導はちょっと問題がある。ざっくり言うと「身の丈に合ってない」学校なのだ。偏差値65オーバーで国公立現役合格30%ということは、基本的に生徒達が(全体として)勉強のほうに振り向いていない。おそらく部活や行事等に追われ、その中で上手く文武両道ができていないのではないか。
もちろん、それならそれで、部活や行事をバリバリやって、大学は割り切って3科目受験の私立大、というのもありだ。そうやって国公立大の合格者は少ないが早慶上理ICUあたりに注力する上位高校もある。非常にスマートな戦略だ。逆に、学力が伴わない(学校側が生徒達全体を牽引できない)のに、理想だけ「国公立大学絶対主義」を掲げて突き進むような高校は進路指導も授業設計も全体が狂っていると言わざるを得ないだろう。
②偏差値60前後の高校
合格者の最頻値がどこにあるのかに注目する
A)日東駒専以上、B)日東駒専、C)日東駒専以下。ざっくりと三つに分ける。日東駒専以上ってどこ?という話になるが、あまり気にすることではないと思う。
単純に成成明学獨国武(成蹊・成城・明治学院・獨協・國學院・武蔵)は日東駒専より上。付随して東京女子・日本女子あたりも日東駒専より上と考えて差し支えない。「獨協の経済学部よりも日大の法学部のほうが偏差値上だろ」とか「東洋大より東京経済の方が今は難易度が高い」とかそういう細かい議論もなし。
偏差値60前後の高校に通った人の場合、普通に塾で勉強して受験したら日東駒専は確実に受かるはずだ。そしてこのレベルから受ける人はほとんどが第一志望校をMARCHクラス(もしくは国公立や早慶上理あたりを狙う人もいる)になる。日東駒専ももちろん受けるだろう。そして抑えとしてさらに下の大学も受ける。それぞれのカテゴリーにおいて、すべての大学を足した時、どこの山が一番大きくなるのか?
A>B>C ←これ理想。
B>A>C ←不発(3年連続これなら高校としてはダメ)。
A>C>B ←塾(予備校)に通っている人が多い証拠。テクニックで這い上がった感がある結果。
C>B>A ←論外
中堅上位校の場合、チャレンジ精神が何よりも大切。明治大に何人受かったか、中央大に何人受かったかではなく、とにかく日東駒専より上に登ってやる、自分の能力をこれからも伸ばすんだ、という気持ちがあるかどうか。それを総量としてみると、学校全体の勢いもわかると私は考えている。
③偏差値50台前半の高校
現役大学進学率(Fランク校を除く)に注目する
四年制の大学に進学することが進路のすべてではない。家族を養いたい、しっかり一人立ちしたい、と言って高校卒業後就職する卒業生たちがいる。やりたい仕事がある。身に着けたい技術がある。だから専門学校・短大に行く卒業生たちもいる。素晴らしいことだと思う。
ただそれは平成・令和の現代にあって、全体の中では少数だ。容易に想像ができるとおり、高校の学力水準が下がると、「なにかにチャレンジするために専門学校・短大に行く」のではなく、ただ学生という時間を引き延ばすために専門や短大に進んだり、容易に合格できる四年生大学に進学する人も増えてくる。
そこを除いた「チャレンジ」としての大学受験者がどれくらいの割合でいるのか。中堅校の進路先を見るときは、私はいつもそこに注目する。
前述の通り「大学合格者数」が進学者数にはならないが、概ね(Fランク校を除く)四年制大学進学者数が全校生徒の過半数を超えるかどうかは、「進路を真剣に考えている生徒が多い高校」の判断基準だと捉えている。
繰り返しになるが、四年制大学進学者が6割いたからといって、残りの4割が落伍者なわけでは決してない。ただ、四年制大学の進学者が6割いたということは高校3年生の夏に受験勉強に励んでいた生徒が全体の6割に達していた、ということになる。これは素晴らしいことだ。バイトや部活や遊びにも全力だが、勉強もやるときはやる。自分の進路を真剣に考える時期を高校時代にしっかり作った。そういう生徒が半分以上いる高校って、立派な高校だな、と私は思うのだ。
③ コストパフォーマンスで考えたときのオイシイ志望校選択とは の記事に続く
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最終更新:2022年6月26日