前回のシリーズ1でお話した内容を少しまとめてみます。
「次年度の入試の出題範囲は変わるが、都立上位校(自校作成校)を受検するグループは英数ともに通常通り(関係代名詞も三平方の定理も)学習するべきだ」。それから「都立中堅校(共通問題校)を受検する人たちは、今回の変更範囲(関係代名詞と三平方の定理)を覚えなくても入試の点数にあまり影響はないが、学習としてはすべて覚えたほうがよい」。
この認識で間違っていませんか?
全くをもって、その通りです。要約してくださってありがとうございます。
これで、今日初めてこの記事を見る人はシリーズ1の記事を読む手間が省けましたね♪
いやいや違うでしょ(笑)
他にもいろいろ重要なことが書いてあるので、ぜひシリーズ1から読んでいただきたいと思います(汗)。詳しくはコチラをご覧ください。
ところで、後半の点について質問を続けていきたいと思います。私立の上位校も受験する都立自校作成校受検者はともかく、覚えなくても入試の結果に大差ないはずの都立共通問題校の受検者達も、今回の未修範囲(関係代名詞と三平方の定理)を覚えるべきなのはなぜですか?
まず英語からお話しします。関係代名詞を覚えることは長文を読むスピードを上げることに役立つからです。「関係代名詞を覚える」というより、「後置修飾の仕方を覚える」と言った方が正しいですが。今回の英語の出題範囲の縮小って、英語に関してはすごく中途半端な区切り方をしているんですよ。「分詞の形容詞的用法」は出題範囲なのに、「関係代名詞」は出題範囲から省く。普通はセットで覚えるべきところなんですけどね。この二つの単元を通して、英語を後置修飾で訳す力が身につくんです。
だから例年のように、文法な細かな点まで教える必要はありませんが、長文を読んだときに「関係代名詞の文」として一文を読み切れるぐらいの力が付くところまではレクチャーし、練習したほうがよいと思います。授業としては3時間もあれば身に付きますよ。
そうしておけば、過去問も難なく解くことができるので通常の過去問演習もしやすいですし、来春の入試本番で英語の長文を読むときも後置修飾に慣れているから、分詞の形容詞的用法が含まれた文とかもスムーズに理解できるでしょう。入試本番に「関係代名詞」の文が出るかどうかは問題ではありません。実際、仮に関係代名詞の文が出てきたとしてもほとんどの受験生は大して気づかないと思いますよ。自然と後置修飾で訳しているだけですから。英語って言語だから、それでいいんです。ただし、言語だからこそ、自然に訳せるレベルまで学力を上げないといけない。だから関係代名詞の文を理解することは「受験の肝」なんです。
なるほど。長文読解力を養成するために関係代名詞という単元を学習する必要がある、ということですね。
数学についてはどうですか?
三平方の定理は、もともと学力中堅層の子たちには「ピタゴラスの定理」と、それに基づく「1・2・√3」と「1・1・√2」の概念だけ教えて、少し実践演習したら終わりなんです。所要時間は2時間くらい。あとは「直角三角形の1辺の長さを見たら三平方の定理をまず疑え」と伝えています。はっきり言って、都立共通問題で85点くらいまでを狙うならそれで十分ですから。
「どちらにせよ、2時間程度で教えられるなら、今回も教えたって損はないだろう」ということです。
そもそも三平方の定理って、中学受験をする小学生だってある程度知ってますよね?三角定規を見せながら…。
やりますね。「三平方の定理」という言葉は教えないですし、√の部分は省きますが、どこが1:2なのか、どうなると1:1になるのかは小学生でも知っています。
数学の図形の問題って、「大体これくらいの大きさになる」っていう感覚がすごく重要だと思っています。例えば角度の問題であれば、「これはどう見ても90°以下だな」とか。
「明らかに三平方の定理だ」という問題はもちろん来春の都立高校入試の問題には出ないでしょう。でも直角三角形の長さに関係する内容が何かしらの形で絡んだときに、ふと長さの比が出てくるぐらいの感覚が欲しい。それを磨くために2時間分の授業を割くのは無駄ではない、と私は思います。
英語・数学ともに、「未修部分も教える意義がある」ということがわかりました。
それにしても、「関係代名詞」のマスターに3時間、「三平方の定理」には2時間。ものすごいシンプルですね。
いや本来、勉強ってシンプルなものですよ。学校も(そして多くの大手塾も)もっとコンパクトに教えていけばいいのに、と思います。
多くの大手塾はテキストを追いかけるカリキュラムのせいで、1単元が異様に長いですよね。まぁ、ああせざるを得ないと思うんです。ほとんどの授業を学生アルバイト講師が担っているから、臨機応変な対応(授業のコンパクト化)ができない。既定の分厚いテキストを1ページずつ進めていくしかない。でもそれってすべての生徒に必要な分量ではない。無駄が多いんです。
学校なんかもっと無駄だらけですよ。中学生の生徒たちが学校の授業で板書したノートを私はよく見るんですが、社会とかは特に無茶苦茶な授業をしている先生が多い。明らかに高校入試では出ない内容(高校の日本史単元や政治経済の単元)を教えていたり、ただの先生の知識自慢みたいなネタがゴロゴロある。もちろん、生徒達が授業内容に興味を持つように話を膨らませることは私もしますよ。でもノートを見ればそういう類いのものではないことが明白です。
コロナ禍で有事なんだから、子供のことをみんなで全力で考えて、できるだけコンパクトに、必要最小限のことに集中してやろうよ、って思うんです。
そうしたら、入試の出題範囲だって縮小なんかしなくても、残り7カ月で全部終わると思うんですけどね。
…はい(汗)。
今回の「山口講師が斬る」のコーナーでした(苦笑)。
続いて、理社の学習方法についてもお聞きしていきたいと思います。