高校受験

2020年度都立高校入試「数学(共通問題)」講評-問題傾向変わらず安定の科目。85点獲得を常に意識しよう。

年々難化していく英語(共通問題)とは対照的に特に大きな変化がない数学(共通問題)

さすがに「ゆとり教育世代」(平成15年度~平成24年度位まで)の問題よりは複雑になり、問題自体も毎年ブラッシュアップが図られていると感じるが、基本的には問題の形式も、順番も特に変わっていない。都立入試の問題をトヨタの車に例えるならば、英語は「プリウス」、数学は「ハイエース」みたいなものだろうか。質実剛健という言葉がよく似合うのが「数学」の入試問題だと私は捉えている。

逆に言うと、この科目でしっかり点数を稼いでおくのはとても重要だ。都立入試の数学の良さは、簡単な正負の数の計算問題から空間図形の応用問題に至るまで、ほとんどの問題が1問5点の配点にしていることだ。1問を解くのに何分もかかる難問を解いても、簡単な計算式を解いても、とにかく1問で5点。ある意味でフェアだと思う。学力が厳しい受験生は計算などの基本問題をしっかり解いていけばいい。50分の試験時間の中であえて難しい問題には取り組まずに、何度も何度も計算や他の基本的な問題を繰り返し解いて確認してみてほしい。10問解ければ50点だ。逆に高得点を狙いたい人はガシガシ解いていって一つ一つ問題をクリアしていけばいい。一問解き終わるごとに5点が加算される。

都立入試の数学のさらに良いところは、問題の難易は多少あるものの、本当に応用力が試されるのはわずか3問(15点分)であり、基本的に教科書レベルの問題をすべての単元でしっかりマスターできれば85点まで点数をとれることにある。

都立入試の数学(共通)の問題構成は以下の通りだ。

最初の6問が計算問題。続いて確率(今年のように資料分析も増えてきた)、角度、作図と続いて大問1が終了。ここまで9問、合計46点(作図のみ6点)。

大問2は思考力を問う問題で、(1)が文章と図を見ながら簡単な文字式を作る問題。(2)はその文字式をさらに発展して証明させる問題。証明のみ7点で計12点。

大問3は関数で(1)は(ほぼ毎年)二次関数の変域を問う問題。(2)は二次関数の2点間を結ぶ一次関数の直線式を問う問題が多い。最後の(3)が応用問題。計15点。

大問4は(1)が図形の中の角度を問う問題。ほとんどが文字式となる。(2)は合同ないしは相似条件を使った図形の証明問題。最後の(3)が応用問題。証明のみ7点で計17点。

大問5は2問構成。(1)は三平方の定理などを使って立体図形の1辺の長さを出す問題などが多い。基本的にピタゴラスの定理さえ知っていれば解ききることができる程度の問題だ。そして(2)が応用問題。計10点。

つまり、大問3、大問4、大問5のそれぞれ最後の問題が応用問題となる。繰り返すが応用問題すべてが解けても1問5点、合計15点でしかない。逆に作図や証明の問題は配点が高いが、基本的な公式や条件を理解しており、且つある程度訓練を受けていればすべて確実に取ることが十分可能な問題だ。つまりドル箱と言える。

 

私は、都立高校で偏差値65を超える共通問題の最上位校を受験する生徒を除いて、この基本問題だけをすべてをとるように、つまり85点を確実に狙うように指示している。言い換えると、最上位の共通問題校受検者を除いて、応用問題を解くための特別な訓練をしていない。応用問題を解けるようになるまでにかかる努力や時間と、合格への得点源としての価値が釣り合わないからだ。当日に大きな苦労をして応用問題が1問だけ解けたとしても、計算問題で正負の数のプラスとマイナスを1問間違えただけで吹き飛んでしまう。だったら、計算問題で絶対に間違わない訓練を積み重ねたほうがはるかに良い。(もっとも、85点を本気で狙うぐらい勉強すると、大問3か大問4の応用問題も一問くらい解けるようになる可能性が高く、実際には90点をうかがうラインまで行くことができる。)

逆に、私は(本人の学力によほどの不足を感じない限り)中堅の都立校を受検する生徒に対しても、数学の問題で85点をとることを目標とするように強く勧めている学校の評定で数学が「3」だったとしても、都立高校の数学で85点取ることは充分に可能だ。それくらい、基本をしっかり押さえていれば、確実に取れる問題が毎年しっかりと用意されている。

今年の数学(共通)の問題を振り返ってみると、大問1の(8)で出てきた角度の問題(今年は円周角だった)は、最初に見た瞬間、ちょっとだけヒヤッとした人も多かったのではないだろうか。例年のようにいくつかの角度が既に分かっている状態ではなく、いったんヒントになる角度をaか何かの文字で置き換えて解かなくてはいけなかった。(ある意味で、大問1で大問4の(1)を解くような感覚だった。)しかし、一度冷静になれば、いわゆる「ブーメランの法則」で解くだけの問題だ。難易度自体は例年並みだったといえよう。

あとは、特に大きな変化はなかった。むしろ、大問1の(7)にある度数分布の問題は小学生並みに簡単だったし、大問3の関数の問題も、上述のとおり、(1)で変域、(2)で直線式、とかなりオーソドックスな流れだった。過去問を10年分以上しっかり解いて理解していた受験生にとっては簡単な問題、確実に85点を押さえられる問題だっただろう。

 

数日前にアップした「今の都立高校合格に必要な条件とは③」でも触れたが、入試において絶対に点数を確保できる「武器になる科目」はできるだけ多くもっていたほうがいい。都立中堅校を狙う受験生にとって、数学が確実に85点を確保できる科目になるならば、「武器になる科目」を一つ増やすことになるだろう。また、都立上位校を狙う受験生は、理科・社会などの科目で満点を取れるよう「武器化」するとともに、数学を85点でしっかりと固定させることは、点数の安定化をもたらし、入試当日のプレッシャーに耐えやすくなるに違いない。

 

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最終更新:2022年6月26日

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