中学受験

都立中高一貫校を受検することの価値。高校受験・大学受験担当講師の視点 ③

2014年の12月のことだ。現在の高校3年生が、まだ中学1年生だったころ。

私:「え~っと、24日と30日に補習をやります。どうせ部活とかないだろうから。24日は学校終わったら塾に集合。30日は朝からね。」
生徒達:「え~。まじかよ~!!」

いったいどれだけ鬼畜な塾なんだ!?と思われるかもしれない(笑)。だが、この年の12月24日つまり『なんちゃらイヴ』の日も、12月30日の晦日も、当時の中1生は9割以上が塾に登校して補習を受けていた。なぜそんなことができたのか?

理由は簡単で、彼ら彼女らの多くは、前の年の12月24日も12月30日も塾にいたからだ。そう、つまり都立中学受検経験者だったのである。

2014年の春、残念ながら多くの都立中学受検者が不合格に涙を呑んだ。とはいえ、4月からは地元中学校での新しい生活が始まる。すぐに気持ちを切り替え、多くの受験生がその後も塾での勉強に励んだ。(今思うと、この代はなにより保護者の方からのご信任をいただいたことが大きかったと感じている。中学受検が終わろうとも、引きつづき私にお子さんたちを預けてくださった。私もこの恩と、中受での雪辱を果たすことに必死だったのかもしれない。)
とにかく勉強のペースを上げた。もう「山口先生はバカになってしまったのか?」と周りが笑うほど、私も飛ばしに飛ばした。中1の冬までに、英語は未来形を終了、数学はすでに連立方程式までレクチャーした。

同時に、生徒達には部活動やクラブ活動を思いっきり楽しむようにも指導していた。前年、中学受検でそれなりにプライベートで我慢を強いられた学年である。中学生の時に、いろいろなことを試してほしかったのだ。
生徒達は皆、通常の平日は夜7時過ぎまで部活。週末は試合や発表会。大して家庭学習も進まなかった。そんな折で実施した12月24日と30日の特別補習である。

中学受検を経験すると、同じ公立の中学生でもまったく動きの質に差が表れるな、とつくづく感じた。文武両道。部活も目一杯やるが、勉強もしっかりやらないといけない(というか、やらないと気が済まない。テストで上位をとらないと納得できない)。だから、クリスマスだろうが晦日だろうがどこかで帳尻を合わせるのが当たり前なんだ、という気概に満ちていた。

そして、中学受検の経験者は皆、要領の良さが毎日の学習に表れていた。とにかく中受経験者たちは「こちらが1言えば、3か4理解してくれる」安心感があったのだ。同じ教師が小学生のころからずっと教えている故に、生徒も先生もいわゆる「ツーカーの仲」だったことが上手く働いたのかもしれない。ただ、小学生のころに、わずかなデータ(グラフや資料)から答えを導きだす訓練をしていた彼らは、とにかく何でも自分たちで導き出していく力が備わっていた、と今振り返って感じている。

中2・中3と学年が上がる中で、検定を受けていくことの大切さを説くと、自主的に英検4級、3級と皆が受験するようになり、次々に取得者が出てきた。(そもそも中2の春の時点で、英検四級は楽勝で受かるほど授業が進んでいたのだ)。最終的には、中3生にして英検準2級合格者が、都立中高一貫受検経験者の過半数を突破した。そう、自らが成功するために必要なことはなんなのか、彼らは自主的に結論を出し、動く力を中学生にして身に着けていたのだ。

結局この代は、高校入試で都立自校作成校を含め、近隣の都立上位校を文字通り「総ナメ」するほどの結果で合格を出し、見事、中受のリベンジを果たした。

さて、そんな学年が今年、大学受験を迎えようとしている。中学受験で合格を勝ち取ったグループも、中受で苦しい思いをし高校入試で屈辱を晴らした上記のような生徒も、そして当時の熱気を全く知らない高校生になって入塾してきた子もいる(もちろん、彼らには彼らのドラマがあったはずだ)。

当たり前ではあるが、すべての子が最低1回(中受ないし高受)、もしくは人によっては2回ほど(中受+高受)受験を経験してきている。
皆、強気の受験プランだ(笑)。それも、冒頭で述べた通り、自らの代が「最も厳しい入試」であることを覚悟のうえで、相当強気の受験プランにして臨もうとしている(←もちろん、抑え校も含めてちゃんと私が監修しているのでご安心ください)。

特に、上記で述べた「都立中高一貫経験+高校入試リベンジ合格組」の何名かは「もうここまでくると、緊張も特にない」と余裕の笑みさえ浮かべている(笑)。「もはや勝負師だなぁ」と思わざるを得ない。でも同時に、私はそんな強気な彼らを誇りに思っている。最終的な結果がどうなるかはわからない。でも、今まで沢山の壁を乗り越えてきた自負と、自らを信じる力(自信)を18歳にして”ある程度”会得しているのだ。素晴らしいことではないか、と思う。きっと彼らは、最終的にどこの大学に受かろうと、「ベストを尽くした」と自らの受験生活を振り返って満足できるだろう。そして進学した大学、あるいはこの先の社会人生活においてもベストを尽くすはずだ。
それでいい。教育って、そのためにあると私は思う。学校名でも偏差値でもない。

もっとも、中学受験(受検)を経験したすべての人が上記のようなストーリーを経験するわけではないことも私は知っている。こうした文章で取り上げることができないような事例もまた、多くの塾講師は経験してきているだろう。

ただ、もし今、地元の公立中学校に進学を予定している小学4年生、5年生のお子さんがいらっしゃるなら、私はたくさんある選択肢の中の一つとして、都立中高一貫校の受検を経験することもありではないか、とお勧めしてみたい。いうまでもなく、これは遊びではないし、上記でご理解いただけたと思うが、「かなりガチ」な受験生活である。
ただし、お子さんが一番伸びていくこの小学生の時期に、そのエネルギーをどこで使うのか、スポーツなのか、音楽なのか、勉強なのか、はたまたスマホやゲームなのか、一考の価値があるだろうし、その選択は遠からずお子さんの今後の人生に影響を与えることになるだろう。

もし、勉強面でなにかのアクションをとりたいと思った場合は、ぜひ信頼できそうな塾に足を運んで相談してみてほしい。もちろん、大田区内もしくは近隣にお住まいの方がいれば、お気軽に大森山王学院まで