大田区大森の進学塾、大森山王学院の山口です。
「都立高校入試の問題は、その時々の「世相」を表しているな。」
とつくづく感じます。
世相と言っても、「国が(社会が、あるいは大人たちが)が子供たち(中学生達)にどういう大人になってほしいと願っているか」という意味での風潮・世相。
かつての「ゆとり教育」から脱出しようと、2009年くらいから少しずつ「難化」する方向で突っ走ってきた都立高校入試の問題。平成15年~平成20年くらいの過去問と比べると随分難しくなりました。(私個人としては良いことだと思っています)
受験生たちに「考える力」、「読み解く力」をつけさせたいのだな、という思いも年々感じるところです。理科や社会は前置きの文章や資料が随分と長くなったり増えたりして、以前のように感覚的に解こうとしても解けない構造になりました。英語に関しても回答例と同じ文を本文のアンダーライン前後からそのまま抜き出すのではなく、文章の意味を考える問題が随分と増えてきました(英作文も然り)。
と同時に、国語力が低下している現代の受験生たちに対する出題者の「迷い」もここ数年の都立高校入試問題からは感じます。平均点が70点を超えるここ数年の平易な「国語」はその代表でしょう。都立自校作成校の問題はより大学入試を意識した問題になってきているのに、共通校の国語は「受験生をバカにしているのか?」と思わんばかりの選択肢が多いと感じます。「社会」の記述問題も然り。採点する側のミスや負担を減らす目的なのでしょうが、記述問題が2問は少なすぎです。(早く以前の4問体制に戻すか、いっそのこと完全に割り切って全部マーク形式にでもしたほうがまだいいでしょう。)
加えて、極端なほど「難しさ」に振ってしまった科目や問題も年によってはありました。我々の知らない深い意図が出題者側にあるのかもしれませんが(たぶんないと思います)、「おそらくは出題者のエゴだな」と私のようなひねくれ者は思うのです。
正直なところ、令和になってからの都立高校入試の問題は、ちょっと歪な問題が多いな、と私個人は感じていました。平成20年代のように(いい意味で)「少しずつ難化していく問題」ではなく、振り子を極端にどちらかの方に振っているような問題ばかりで、はっきり言って「真摯な態度で勉強をしてきた受験生たちに失礼だよ!」と言いたくなる問題が散見されました。
ところが、、、。
「今年の都立高校の問題は、いろいろとよくなったな!」
と思います。
良問が多いですね。
一つ一つの問題としても、科目全体の構成としても。
国語。
学力下位の受験生でもスラスラ解ける大問3の小説(昨年同様)。対して論説文は少しキレを取り戻したかな、という印象。大問4の問3などは少し受験生に考えさせるような質問。大問5の古典で、昨年度から始まった「助詞の問題」(問5)や「原文把握の問題」(問4)を継続させたのも良かった。もう少し難しくてもよかったかも。
漢字は残念ながら駄作。受験生が「新聞を読めるレベル」になることをもっと意識してほしい。
平均点は昨年の80点からは下がってくるはず(昨年が簡単すぎるし、平均点は高すぎる。)67点くらい、と予想。
数学
「箱ひげ」が出てきました。内容は簡単ですが。大問1は予想どおり「円周角」。しかも補助線を引いて三角形の外角を出すタイプの問題でした。比較的簡単な問題ではあるけれど、共通テストの大問1はこれくらいがちょうどいいな、という感じです。計算は本当にサービス問題。学力下位層がしっかり全問取れる、というのは大問1として重要だと思います。しっかり勉強すれば数学ギリギリ「3」の生徒でも大問1は46点を取れる問題。これが良問。(あえて言うならば、問9の作図はもう一捻りほしかった)
逆に大問2以降は少し「難しめ」になりました。(良いと思います)
大問2の1は例年より少し難しめ。2の証明はやや簡単。
大問3の関数は例年通り。普通に解ければ最初の2問は解ける。
大問4は1が例年より少し難しめ。2の証明もやや難しめだが、去年が簡単すぎた。一昨年や3年前の問題の流れからすればこのくらいがちょうどいい問題でしょう。
大問5は、1が難しかった。解けたあなたは「数学出来る人」だと自信をもってください。
当日で60点~70点くらいを狙っていた、いわゆる「中レベル」の受験生は苦しかったと思います。大問2の1とか、大問4の1、大問5の1などの「比較的取り易い問題」が難化したからです。学力下位層は無風だったはず。逆に「中の上」以上の人は無事乗り越えられるレベルだったと思います。
平均点は53点くらい、かな。(正直なところ、昨年の数学の平均点が57点だったのが不思議です。まぁでも、昨年が57なら今年は53くらいでしょう。)
英語
昨年同様。あまり変わらず。英語はこのくらいのレベルでしばらく固定なのかな、と思います。
引き続き英単語力はある程度必要でした。英単語から逃げている人たちは難しい。でも単語さえ読めれば解けます。英作文もある程度事前に練習した人なら思いつく内容でした。今の都立5科目の中で唯一「難しすぎもせず、簡単でもない」科目だと思います。普通に受験勉強をしっかりやっていれば80点は取れます。逆に80点取れなかった人で「3年後大学に進学したい」と思っている人は、高校に入ってから相当頑張ったほうがいいです。大学入試で全く勝負できない人になってしまうでしょう。
個人的にはもう少し難しい問題を希望します。今の都立共通問題の英語では英検3級の問題よりもやや簡単、という位置だからです。かつて「ゆとり教育」だったころの都立自校作成校の問題(都立国分寺や都立新宿あたり)くらいが共通問題としては望ましいと思いますが、現状このレベルの問題でも平均点は60点です。これ以上難しくするとみんなついていけないかな、、、。
昨年の平均点は62点。今年も62点くらいと予想します。
社会
今年一番良問だったな、と感じたのが社会。
一昨年がひどすぎた都立高校の社会。昨年は平均点こそ一昨年に比べて上がりましたが、問題は引き続きひどすぎるな、と感じるものばかり。(学校の教科書や資料集をしっかり読み込んでも解けない問題は公立高校の問題で出したらダメですよ。)
今年はよかったな、と思います。しっかり勉強している人が「ギリギリ」全部解けるレベルの問題でした。本当に真剣に勉強して、しっかり理解・判断できる中3生なら100点取れると思います。
大問3の2とかいい問題ですね。資料を理解すればアイウエは「ア」でわかります。でもある程度勉強した人でも「Wの千葉」と「Yの兵庫」で最後悩むはず。「首都圏の昼夜間人口と関西圏の昼夜間人口ってどれくらい違うんだろう?」と発想できたひとは答えられたはず。
大問5の2も良問。「地方債」(D)と間違えなかったあなたは、しっかり勉強した人。税金の中で今一番割合が多いのは消費税です。←こういう細かいところを教えてくれた塾の先生にも感謝。
記述が3問に増えたのも、大きな変化だったとおもいます。。ただし工夫は凝らされていない。ここまで思考力を必要としない記述だと、逆に「深く考えて解こうとする」タイプの受験生が解答に窮するだろうな、と推察します。特に新設された大問4の2の記述は、回答の仕方に悩んで時間を費やした受験生もいたはず。(今回の社会で唯一改善を願う箇所でした)
毎年、「社会」に関しては私なりに「今年出そうな問題」を考えて、受験直前の中3生たちに伝えるのですが、今年は、
「2008年の洞爺湖サミットと2008年のリーマンショックが同じ問題に結び付けられて出る」
と伝えました。
大問6の2でピタリ賞でした。(どや顔)
平均点は昨年と同様55点くらい、と予想します。
奇問が減りましたが、バランスよく難しい問題が増えたので同じくらいだと思います。
理科
相変わらず、前置きの文章が長いため、一問一問解くのに時間がかかるのですが、令和3年度や4年度などの問題に比べると、長文ながら随分とクリアな文章になったな、と思います。(昨年も『改善してきているな』と感じました。今年はさらに改善が進んだ感じ)
知識さえしっかり持っていれば、難しいですが全問解ける問題だと思います。社会同様、やっぱり理社は「全力で勉強した子が100点取れる」問題であってほしいですね。高校で習うような問題を織り交ぜたり、オタクのような人しか解けない問題を出題者の好みでいれないでほしい。
そういう点では、理科も良問だったと思います。
平均点は昨年と同じくらい。60点前後と予想します。
※平均点予想はあくまで私個人の考えです。あくまで一意見としてご覧ください。上記の点数で進学先・合否判断をされたとしても、何ら責任は負いません。
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