②高校に合格した後の将来のビジョンを冬までに明確にし、なぜ自分は「その学校(への進学)でなければならないのか」を明確にするために、全員に「推薦入試」を受検させる。
中学校の先生は大方「都立高校の推薦入試」を勧める。対して塾の先生の多くは推薦を勧めない。前者の方々の理由はよくわからない(知らない)。後者の方々の理由の多くは、推薦の小論文や面接・ディスカッションなどの対策に時間が割かれ、一般入試の勉強が疎かになる(よって推薦不合格時に、都立一般も落ちる可能性が高まる)から、というものだ。
塾講師である私も、ご多分に漏れずある程度後者の主張論者だ。理由は上記の通り、一般入試の対策に手落ちが出始めることと、そもそも推薦入試の合否判定基準が不明瞭だから。
推薦入試で合格した生徒を見ると、本当に立派だと感じる。学校の内申点や面接、小論文などに関してよい印象を与え得るだけの力を、多くの場合長い時間をかけて培ってきたに違いないからだ。しかし逆に、完璧な小論文対策やディスカッション対策をしてもなお、不可解な不合格者が出る度に、この入試制度に対する不信感を抱かざるを得ない。長年この業界にいると、都立推薦入試に関しては耳を疑いたくなるような現場の情報も入ってくる。(すべてがガセネタであるか、一部の教師の戯言であることを願うばかりだ。)
ただし、そんな入試制度ではあるが、「推薦入試を受けたい」と言ってくる生徒に対して、私は否定はしないし、むしろその機会を活用したい、といつも思っている。
理由は1つ。推薦を受けることで「その高校に行きたい」という思いを強くすることができるからだ。
今年も、都立推薦をしたい、と申し出る生徒たちがいた。なんと、最終的に今年私が担当している生徒の8割近くになった(過去最高である)。
生徒達には全員に2つのことを約束させた。
「一般入試の受験勉強に絶対に支障をきたさないこと。」
「もともと、受かるかどうかわからない入試。たとえ落ちたとしても、決して一般入試まで逃げないこと。」
通常の授業はもちろん、受験学年として行わなければならない課題や、暗記物について、期限遅れや免除等は一切行わないこと。他の推薦非受験組に比べて「自分たちのほうが大変」なんてことは一切考えないこと。そういう邪念が出てきたら推薦入試自体を中止するように。そう伝え、生徒たちも了承した。
私自身はというと、もともと大学入試部門でAO入試などの対応を行っている。それを中3生ラインの目線にしっかり落とし込んで指導することに集中した。どこをどうすれば評価を上げられるか(高得点化できるか)はよくわかっているつもりだ。短い練習時間の中で、しっかりと気持ちを伝え、論理的に考えをまとめる訓練を行う。こういう作業をしていく中で、生徒たちは「なぜその高校に入りたいのか?」「高校に入って、そしてその後大学や社会に出てから何がしたいのか。そのために、なぜその高校に入ることが重要なのか」を何度も自己吟味して文章化・言語化していくことになる。ここが重要なのだ。
結果的に、今年の都立入試は推薦合格者が複数名出た。それは本当に喜ばしいことであり、彼らの自信に満ちた姿を見れるのも幸せだった。同時に、この多くの推薦不合格者もまた、この推薦入試で自分の心に刻んだ志望校に対する憧れや熱意を、最後の1カ月間、合格に向けた受験勉強にぶつけてくれた、と感じている。例年、入試前最後の一カ月は一番点数が伸びる時期であることは間違いないのだが、多くの生徒が推薦入試を経て、一般入試に臨んだ今年、彼らの潜在能力は入試当日にいかんなく発揮されたと私は信じている。
③入試において、何かの科目が大幅に失敗しても不安にならないように、絶対に高得点を確信できる「武器となる科目」を最低2科目用意する。
2月21日。ある自校作成校を受検した生徒が、入試当日の夜に塾で自己採点をしているときのこと。
その子は、「ヤベー」という顔で英語と数学の採点結果を私のところに持ってきた。なんと英数共に40点台。「やっちまった…」というヤツである。
塾で過去問を解いているときは60点台~70点台を当たり前にとっていた。でも、入試当日に緊張してすべてが飛んでしまう。いや、仕方がない。15歳の初めてのチャレンジだ。こういう時に、「受験を経験する意味はたしかにあるな」と感じるのだ。
ただし、その生徒に関しては、私も、そして当の本人も「これで終わった」と悲観はしていなかった。理由は英語と数学の40点台をもってしても、私が伝えた「絶対的合格点」を超えていたからだ。
その生徒はすでに自己採点において、社会で100点、理科で96点が取れていることが確認できていた。国語は大丈夫。予想通り70点台後半をマークしている。内申点をあわせれば、なんとかであるが「絶対的合格点」には到達していた。
「まぁ、大丈夫だろう。こうやって当日失敗する経験をすると、オリンピック選手の気持ちもわかるもんだな、アハハ。」
大失敗を演じてしまった生徒を前に、なんともお気楽な会話であったが、実はこうなることも多少は予測していた。もちろん、その生徒を信じていなかったわけではない。でも、高倍率の都立高校(特に上位の自校作成校)を受検することのプレッシャーは15歳にとって並大抵のことではない。当日は「優秀すぎる」生徒に囲まれて一日中問題を解くのだ。特に今年は自校作成校の問題、全体的に予想外の難しさがあったのでいつも以上にパニックになった受験生が多かっただろう。
だからこそ、(上位校を狙う人は特に)武器になる科目を最低でも2つ持っておくことをお勧めする。特に武器にしやすい科目としては、直前の3カ月で大幅に伸ばせる「理科」と「社会」が望ましいだろう。上記の生徒もまさにそれだった。武器というのは「どんな問題、どんな傾向になろうと、(自分の学力の中では)常に最上位の点数を取り続けることのできる」科目、ということ。中堅都立校を受けるのであれば、理社は直前期の過去問で常に80点を超えるように、上位・自校作成校を受験する生徒なら、理社は直前期、常時満点(100点)をとり続けられるように訓練していかないといけない。実際、この自校作成校受検者は都立過去問で過去22年分のすべての理社の問題の内容を頭に入れて当日の入試に臨んでいる。今年の難易度程度では(と言っても、以前のブログで書いた通り今年の社会はかなり難しかったが…)ビクともしない鋼の学力をもって入試を迎えることができるだろう。そして、他の科目でかなりの「傷」を負っても、一命をとりとめることが可能になるのだ。
入試に「たら、れば」は存在しない。どんな方法でも、最終的に合格を勝ち取れれば、そのやり方は素晴らしかった、となる(もっとも、合格が入試のすべてでもないが…)。
上記に挙げた例は、今年の入試において私が担当した生徒の範囲内で成功した事例に過ぎない。
ただ、入試の成功は一つ一つの先を見越した「準備」の積み重ねだと私は思っている。
次年度2021年に入試を迎える皆さん。残り11カ月。ぜひ自分にできる最大限の準備をしてみてください。上記の経験が誰かの参考になれば幸いです。
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最終更新:2022年6月26日