大田区大森の進学塾、大森山王学院の山口です。
今年の2月に行われた2022年度の都立高校入試の平均点が発表されました。
今日のブログで注目する「社会」については、平均点は49.2点だったとのこと。ちなみに私は3月7日のブログにて、「予想平均点は48点」と書きましたが、ほぼビンゴだったのではないかな、と思います。(他の4科目は微妙に外しました。)
平均点49点。都立高校の検査問題の「社会」としては、過去20年間で最低の平均点です。(近年の最低点は2013年度の51点)
今年の入試が終わった当日、塾に自己採点のため戻ってきたうちの塾の生徒が、「学校での授業がほぼ役に立たないほど難しい」と評していた社会。(ちなみに、その生徒は「社会」100点でした。これが「塾の授業」です。)
たしかに難しかったな、と思います。ちょっと大げさですが、「新時代」に突入したような次元の問題でした。
今日は、その2022年度(令和4年度)都立高校入試の「社会」の問題を分析し、翌2023年度の問題で予測される点を私なりにまとめてみたいと思います。
解説、スタート。
大問1→特に難しくない。②だけちょっと考える問題。
②「鑑真が設立した寺」がある県を答えよ、という問題。
すぐに → 唐招提寺 →A:「奈良県」と導き出せた人はきちんと勉強した人。特に難しくない問題です。でも、京都も選択肢にあったので一瞬戸惑ったかもしれません。問題の最初の方で微妙に悩む問題を入れる。最近の「都立高校入試あるある」です。
大問2(世界地理) これは結構難しかった。
①は比較的簡単。パキスタン、トンガ、アラスカ、アメリカ東海岸を雨温図を見て導き出す問題。
「イスラム」、「季節風」のフレーズを見れば、パキスタン一択になります。
でも、「トンガ」と少し迷った人たちが…。(トンガは貿易風です)
答えが「パキスタン」であることさえ定まれば、雨温図自体は簡単に答えを導き出せる問題でした。
②難しい。プサン、ドバイ、ロッテルダム、シンガポールを3行のヒント文から当てる問題でした(しかも完答問題)。
「取り扱い貨物量」の数値などを見ていた人は「残念」な人ですよ。
「基本的に地理で注目して見るべき数値は、『〇〇〇』だけだ」と私は生徒達に授業で教えています。←通塾生にしか教えません。
「韓国が中国のお隣の国であること」、
「ロッテルダムはEUの玄関口であること」、
「ドバイはオイルマネーで潤っていること」、
「シンガポールの国土は小さいこと」
という非常に基本的な知識だけでシンプルに考えれば解ける問題でした。←しかしその「基本」だけを入試で思い起こすことがなかなか難しいのです。
③色々迷う問題。フィリピン、マレーシア、パナマ、ペルーの中から、質問されている国がどこかを答える問題。
答えは「バナナ」というフレーズと「公用語が英語」から「フィリピン」だと気づけるはずなのですが、ペルーやパナマなどの南米もバナナの栽培をしている国なので、混乱した人が多かったです。南米は公用語がスペイン語なんですが、知っていても入試当日にそういう記憶が上手く働かなかったりするものです。「貿易相手国に日本が上位」というフレーズに注目した生徒は、最後落ち着いて正しい答えを選択できましたね。
大問3(日本地理) こいつはさらに難しかった。
①難問。北海道、兵庫、福岡、長崎を4行のヒント文から完答させる問題。
簡単なのは
「ア」の「中国の鉄鉱石を原料に製鉄所が稼働していた…」というヒント文から
→八幡製鉄所
→答え:「福岡県」
を導き出すことは簡単でしたが、
あとの三つは難しかったですね。
難しさに拍車をかけたのは、「造船」や「製鉄所」や「リアス海岸」という同じフレーズが複数の選択肢に列挙されていたことです。
「【造船】が一つだけなら、もしくは【リアス】が一つだけなら『長崎』と答えられるんだけど…。」と。
「イ」は「高度経済成長・国際貿易港」というフレーズを拾って兵庫県(神戸製鉄)、
「ウ」は「国内炭」というフレーズから「北海道」(夕張の炭鉱)、
「エ」は海岸の距離が長いことから「長崎県」(グネグネしているから直線で引き延ばすと相当な距離数になる)
を導き出します。
②難問。東海工業地域、北関東工業地域、北陸エリア、瀬戸内工業地域から正しい答えを選ぶ問題。
ヒント文一行目の「絹産業と航空機産業を基盤として…」という出だしを見て、
→「あ、富岡製糸場とスバルだ!」
→「群馬県だ!」
→「北関東工業地域だ!」
と、秒で気づけた受験生はうちの塾生です。←さすがですね〇〇君。
これが、「学校の授業がほぼ役に立たない」と評される所以です。
都立高校の入試で高得点を狙いたいなら、これくらいの少ない情報で瞬時に答えが導き出されないと今の問題は通用しません。入試問題は難化しています。そして、当塾はそれを見越して万全の対策を事前にしています。
さて、この問題の難しさはココからです。「北関東工業地域」だとわかったものの、それはグラフのア、イ、ウ、エのどれにあたるのか?
冷静に考えればできます。
1⃣東海工業地域は静岡県オンリーなので、工業出荷額の合計金額が低い。
2⃣北陸には大規模な工業地域はない。よって出荷額が少ないはず。
出荷額が少なく、輸送機器の割合が多い「イ」が静岡(スズキとヤマハ)、
出荷額が少なく輸送機器の割合が少ない「エ」が北陸(北陸には自動車会社の工場はない)。
残った「ア」と「ウ」が北関東と瀬戸内になるが、
瀬戸内は「太平洋ベルト」(つまり昔から工業化されていたエリア)、
「北関東」は1970年代以降に発達したエリア。
よって、出荷額が昔に比べて大幅に伸びている「ア」が北関東。
あまり変化していない『エ』が瀬戸内となる。
難しかったですが、「地理」という単元をしっかり勉強してきた人、「考えて知識を取り入れている」人は充分に解ける問題でした。
ちなみに、私が昨年度教えた生徒達には、日本のすべての自動車メーカーの工場所在地を教えています。よって、うちの生徒達は工業出荷額の「輸送機器」の割合だけを見て、おおよそグラフの比較問題は解けるだけの力を備えています。
大問4 (歴史) これは簡単でした。全問正解して当然の問題。解説は省きます。
大問5 (公民) ①と②は簡単ですね。
③は例によって記述問題ですが、読解力がない受験生は書けなかったでしょう。
④のみ難しかったかもしれません。
法律案の「修正案」はどのタイミングでつくるのか?という問題。
国会に提出したあと、「委員会で議論する」という点を頭で思い描ければ答えられる問題です。
この問題は、学校の教科書や資料集にも基本的に明記されていません。私の記憶では比較的難しめのテキストにもないです。加えて、国会の「委員会」というと、メディアは野党議員が閣僚たちのスキャンダルなどを追求をする場面ばかり取り上げられるため、「法律や予算を議論して修正する」というイメージを受験生たちも持ちづらいでしょう。よって受験生たちの想像力を駆使しても正解するのが難しかったかもしれません。正解した人はご名答です。
大問6(総合)①は比較的簡単。時代順に並べる問題。「ビスマルク」ってだれだっけ?となった人が多いでしょうが、「路面電車」に注目すれば大体想像がつくでしょう。
②が激ムズでしたね。カナダのオタワとトロントとケベックが地図のどの辺にあるか?を聞く問題。
もう、本当にわけわかんない問題です。もちろん、中学校の授業で習う問題でもなければ、塾のテキストにもない。世界地図をいつも眺めているような生徒でないと答えられないでしょう。
地図を頭に思い描けた人は「B」の地図であることは想像できたはずです。←「B」を選択できた時点で、その人は学力上位です。
しかし、「B」のアなのか、イなのか、ウなのか?(この問題は二重で正解して初めて点がもらえる問題です。)
私の昨年教えた生徒の中で、無事正解できた生徒は14人中2人でした。
なぜ正解できたのか。
「こういう問題は、正解は〇〇〇であるはずだから」だそうです。←秘密です。
随分と、長い解説になってしまいました。
さて、来年以降の都立高校入試の「社会」の問題はどのようになるのか。ここからは私の個人的な分析、推測になりますのでご了承ください。
①来年度の問題は、やや簡単になるものの、引き続き難しめの問題傾向になる。
都立は問題の「揺り戻し」が必ず起こります。特に平均点が50点を割った時は必ずです。しかも、今年の都立「社会」の問題は奇をてらいすぎました。大問6のカナダの問題などはまさにそうです。この手の問題を作ってしまうと少なからず問題の作成に疑問を呈する人々が出てくるでしょう。来年はややコンサバティブな問題にならざるを得ないと思います。平均点は来年度おおよそ5点上がるイメージだと思います。(過去の難化した年の翌年はだいたい前年比5点アップの平均点になります)
ただし、問題全体の傾向として、この難しめの問題に変化はないと私は考えます。都立の社会の問題は平成25年位から難易のアップダウンを繰り返しつつも、年々少しずつ難しくなってきているからです。今後もこの傾向は変わらないでしょう。つまり「学校の授業がほぼ役に立たない」ほど難しい問題が出るということです。これは、塾講師の腕の見せ所でもありますね。過去20年もしくはそれ以上の期間の入試問題を読み込んでいる塾講師、東京都立あるいは近隣の神奈川県立の社会の入試問題などにもしっかり精通している塾講師が、いかに無駄なく「ねちっこい」ところまで必要な知識を教えられるか。そして知識を活用して受験生がさらに入試当日に考察する力を備えてあげられるか。ここが都立の社会で高得点を取る分岐点になりそうです。
②文章読解力は不可欠
依然に比べて、都立の社会は「記述」の問題が減りました。10年前は4問ありましたが、今は2問です。ただし、今年の大問5の③のように、一つ一つの記述の問題はずいぶん難しくなっています。「なぜこういう問題が起こっているのか?」、「どうやったら解決できるのか?」というところまで、限られた資料で読み込めないと答えられません。加えて、それを5行~6行で解答する際に文章表現力も必要です。内容が難しいだけあって、「書く力」のない受験生は、入試当日の緊張と時間のリミットで意味不明な文章になってしまうはずです。
記述に限らず、グラフ・資料の読み取り問題も読解力が以前より求められるようになってきています。日本地理はその典型ですね。情報・知識も必要ですが、読み取る部分を間違えると正解にはたどり着けないでしょう。以前のように特定のフレーズだけで一発正解が得られる問題は相当少なくなりました。
来春の入試は果たしてどのようなものになるのか。
ひとまず、私は今お預かりしている受験生たちが入試に充分戦えるだけの力をつけさせるべく、この夏も頑張りたいと思います。
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